北区春季大会1部 1回戦(後編)

query_builder 2025/06/06
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動き続ける試合をピタッと止めるのはファインプレー。これは野球の鉄則の一つですが、この場面で相手にそれが飛び出します。先頭の藤田選手が粘って3ボール2ストライクまで持ち込んだ後の8球目、カットにいった打球は三塁前のファールゾーンへ。この打球を相手三塁手が飛び込んで捕球し、ブルーウィングスは是が非でも出したかった先頭打者をアウトにされてしまいます。


しかし、この試合でも度々起きているように、野球で最も怖いのはエラー。続く鳩山選手の打球は遊撃へのゴロとなりますが、これを相手遊撃手が悪送球し出塁します。さらに立澤選手も相手遊撃手を強襲する安打を放つと、打球が中堅方向へ転々とする間鳩山選手が三塁を陥れる好走塁を見せ、1死1,3塁とします。


ここで打席に立つのは先程守備で悔しさを味わった北原選手。前の回から投げ続ける相手投手の速球は、これまた北原選手にはほとんど経験のないスピードのもの。しかし、北原選手は果敢に食らいつきます。まずは初球を空振り。スピードのある投手に対してはとにかく振って合わせるのが鉄則であり、北原選手はそれを忠実におこないます。続く2球目はワンバウンドのボールとなり、この間に1塁走者の立澤選手がスタートを切り盗塁成功。1死2,3塁と、併殺のない状況を作り、この春までスタッフとして指導してきた北原選手をアシストします。その後北原選手は3球目の直球を空振りするものの、4球目も同じような球をファールにしベンチにも可能性を感じさせます。しかし、ここで相手投手もギアを上げ、5球目も高めに力のある直球を投げ込むと、北原選手はこれを空振り。三振で2死2,3塁となります。


この場面で迎えるのは前の打席から途中出場していた豊田監督。最初の打席では相手投手の直球に打ち取られていましたが、一打逆転の場面、そして目の前で生徒の無念を見れば、その逆境を跳ね除け無念を晴らすのが豊田監督の生き様。あっさり2球で2ストライクを取られてしまいますが、そこから2球ボールを選ぶと、続く5球目でした。高めの力のある直球に対しやや差し込まれたように見えましたが、チーム全員の想いをバットに乗せて力で押し込み、打球は中堅手の頭上に着地。7月に40歳の誕生日を控える長距離打者の意地と経験がチームに逆転の歓喜をもたらし、6-5で5回表を終了します。


5回裏の守備では1死から相手9番打者に三塁強襲の安打を浴び、1番打者の進塁打で2死2塁の同点のピンチ。ここで2番打者の放った打球は三遊間を真っ二つに破り左翼前へ。これを左翼手塚本選手がチャージすると、本塁へ正確な送球で走者を刺します。1部昇格を懸けた試合でも魅せた好返球がこの場面で飛び出し。1点リードで6回の攻撃に入ります。


勢いに乗ると止まらなくなるのがブルーウィングス打線最大の特徴。この回先頭の木下選手が一塁への内野安打で出塁すると、藤津選手の打席ですかさず盗塁を決め無死2塁のチャンスメイクをします。ここで藤津選手は二塁へゴロを転がす進塁打で繋ぐと、2死3塁で藤田選手が中堅へ適時安打。4番が待望の追加点を叩き出し、ここで相手投手をノックアウト。さらに藤田選手が投手交代直後の初球で盗塁を決めると、鳩山選手が左翼へ火の出るような二塁打を放ち1点を追加。続く立澤選手も適時安打を放ち、押せ押せの場面で代打に起用されたのは坪田選手。2019年、滝野川高等学院設立直後に入学し、“テツ”の愛称でみんなから親しまれた当時中学2年生の生徒は、復学に成功し高校野球を3年間やり遂げ、この春から大学生となり、3月には人生初の柵越え本塁打を放ち、そして北区連盟での初打席を迎えました。まさに滝野川高等学院のあるべき形を体現するテツが放った打球は三遊間の深いところへ転がると、全力疾走によりこれを内野安打としチャンスを拡大。その後は続かなかったものの、3点を追加し、さらに教え子の連盟初安打も重なり、大きな攻撃となりました。


9-5でブルーウィングスがリードした状況で6回裏を無失点に抑え、7回表は無得点となり迎えた7回裏。この回が最終回であることが審判から通達されます。

ここまで120球を投じていた小笠原投手ですが、先頭の相手8番打者を中飛で抑えまず1死。しかし前の回からスタミナに陰りが見えており、9番打者、1番打者に続けて四球を出してしまいます。ここで相手2番打者を三塁ゴロに打ち取りますが、試合途中から三塁の守備に就いていた鳩山選手がこの打球を捕球できず1死満塁。続く3番打者に初球を捉えられ、右翼線への2点適時二塁打を浴び9-7。なおも1死2,3塁と、一打同点のピンチを迎えます。

この場面で小笠原投手は最後の力を振り絞り、懸命に腕を振ります。相手4番打者に対しては一度もバットを振らせることなく見逃し三振に打ち取り2死を取ると、次の打者で試合を決めようと、外野手は同点阻止のための前進守備を敷きます。

相手5番打者を全球直球でフルカウントとすると、この日の154球目。決めにいった渾身の直球を相手打者も一点張りでフルスイングをすると、その打球は前進守備の中堅の頭上を越していく三塁打。痛恨の同点打となってしまいます。

完全に意気消沈となったブルーウィングス。対照的に一気に蘇ったビーゾーン。その流れのままに、続く6番打者は2球目の直球を打ち返すと、打球は小笠原投手の頭を越えて二遊間へ。二塁手の立澤選手がなんとか追いつきますが、相手打者は左打者であり、打った瞬間お手上げという打球。懸命な送球も虚しく、サヨナラ内野安打となりました。

 

攻撃面では上手くいったものの、守備面でチームを離れた似内、小瀬澤、陽岡の3選手の穴の大きさを痛感する残念な結果となりました。その一方、北原選手、坪田選手と若い選手も起用でき、これまで長くチームの主力として貢献してきた藤津、立澤両選手が中堅としてその矜持を1部でも示したことは、チームにとって大きな収穫となりました。そして何より、一人で156球を投げ抜いた小笠原投手に対し、「このエースとともにこれからもずっと1部で戦いたい」という強い想いが芽生える試合でした。

 

☆豊田監督コメント 「まず小笠原投手は本当によく投げてくれた。さすがはエース。打線が今日に至るまでの数試合振るわなくて心配したけど、みんなよく打った。やはり1部でしか得られない経験値がある。だから絶対に1部でずっと戦いたい。野球は生涯スポーツ。この負けで野球人生に区切りをつけてはいけない。今日の悔しさをずっと引きずりながら仕事をしたり学業に励んだりしながら、またみんなで勝利を目指し、生涯続く成長の道のりにすればいい。(自身の逆転適時二塁打について)あっさり2ストライクを取られて、とにかくコンパクトにセンター前だけを狙った。絶対に打たなければいけない場面で打ててよかった。自分が1部でも選手としてやれるという自信になった。」


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滝野川高等学院

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