フリースクールの抱える課題と教育機会確保法

query_builder 2021/10/12
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滝野川高等学院教務 足名笙花

はじめに

こんにちは。いつもの足名です。

今回のブログでは、私たちが運営する「滝野川高等学院」のような民間のフリースクールが全国にどの程度存在し、どの程度の児童生徒が利用しているのか、文部科学省のデータを用いながら説明しつつ、民間のフリースクールが抱える課題についても言及していきます。

  • はじめに
  • 全国に点在する民間のフリースクール数と教育支援センター(適応指導教室)数
  • フリースクールに通う児童・生徒数とコロナ禍による環境の変化
  • 教育機会確保法とフリースクールが抱える課題
  • おわりに‐不登校を取り巻く課題・実態‐

全国に点在する民間のフリースクール数と

教育支援センター(適応指導教室)数

まず皆さんは日本全国にどの程度の民間のフリースクールが存在するか?

ご存じでしょうか。

答えは…約500施設です(2015年度の調査結果より)。

多いと思ったでしょうか?少ないと思ったでしょうか?

ちなみに各都道府県の教育委員会が運営している教育支援センター(適応指導教室)は2019年度時点で1142施設存在し、実に全国で63%もの自治体が設置しているという結果になっています。

私からすると、民間のフリースクールが全国にたった500施設しかないということにも驚きですし、不登校数が18万人を超える今、37%の自治体は教育支援センターを設置していないことにも驚きです。

例えば民間のフリースクールの場合、単純計算で「500施設÷47都道府県」を行うと、1都道府県あたり、たった11施設しか民間のフリースクールが無いことになります。また教育支援センターに関しても「1142施設÷47都道府県」を行うと、24施設という結果。また民間のフリースクールは都市部に集中しており、都市部から離れた地方では全く存在しないことも珍しいことでないことを考えると、不登校の受け皿となる公的私的な教育機関がいかに足りていないか知ることが出来ます。

例えば下記のURLは「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」なのですが、この調査結果の18頁を見ていただけると、東京都は54施設、次いで神奈川県が45施設、そして北海道と大阪府が27施設広島県・埼玉県が22施設ということで、どこも都市部が栄えている地域であることは間違いがありません。

一方、青森県や秋田県、岩手県をはじめとした東北地方や、群馬県、石川県、福井県、高知県などは各都道府県に民間のフリースクールが1施設しかなく、そして多くの都道府県では1施設ではなくとも1~5施設大変少ない結果となっています。

もちろん民間のフリースクールの調査結果は6年前のものですし、教育支援センターの調査も2年前のものなので、現在の状態は当時よりも好転している可能性が高いです。

しかしながら民間のフリースクールに関しては2017年に「教育機会確保法」ができたのにも関わらず、フリースクールへの援助金や、フリースクールを利用する家庭に対する支援金も以前無いため(平均利用料3万3千円)、この2年にわたるコロナ禍によって、フリースクールの中には生徒が利用しなくなったり、学校がオンライン授業に対応したために打撃を受け、潰れてしまった施設も多々存在します。

フリースクールが各都道府県に11施設、教育支援センターは24施設…これではまだまだ不登校の子どもたちの「多様な学びの場」の担保は難しそうですね。

フリースクールに通う児童・生徒数と

コロナ禍による環境の変化

では以上のような民間のフリースクールに通う児童・生徒数はどの程度なのでしょう。

不登校の小学生・中学生・高校生の情報については、文部科学省が毎年更新している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」を見ると明らかになります。

最新版である令和元年度調査結果を鑑みると、「相談・指導等を受けた学校内外の機関等及び指導要録上出席扱いとした児童生徒数、通学定期乗車券制度の適用を受けた児童生徒数」87‐89頁に、「民間団体・民間施設」に通学していた小学生は1年間に2,357人、中学生は3,971人ということで、計6,328人もの児童・生徒が民間団体・民間施設(フリースクールなど)に通学していたことが分かりました。

ただし、この「民間団体・民間施設」はイコール「フリースクール」というわけではないため、大体これくらいの数の子どもたちが民間団体や民間施設を頼りにしているということを示しています。

また90頁の「自宅におけるIT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした児童生徒数(人)」を見ると、小学生は174人、中学生は434人、計608人ということで、前年度平成30年度の調査結果が小学生88人、中学生198人、計286人であることを考えると、2倍の数値になっているため、今月末に発表される令和2年度の調査結果ではコロナ禍によって急速に加速した「ホームスクール」および「オンライン授業」を活用した不登校生も増えていくことが見込まれます。

上 平成30年度 児童生徒の問題行動等調査結果公表資料
上 令和元年度 児童生徒の問題行動等調査結果公表資料

教育機会確保法と

フリースクールが抱える課題

ここまで全国に点在するフリースクールの数と、

民間団体・民間施設に通う児童・生徒の数を示してきました。

ここからは、フリースクール運営と密接に関わっている「教育機会確保法」の中身と、フリースクールが抱える様々な課題についてお伝えします。

教育機会確保法は2016年に公布され、2017年に施行された、不登校の児童生徒を中心に学ぶ権利を保障し、全ての子どもたちが多様な学びの場で学べるように制度を整えるための法律です。

この法律の制定により初めて、不登校の子どもたちが民間のフリースクールやホームスクールで学ぶことが法的に認められました。

そして今まで難易度が高いとされてきた民間のフリースクールへの通学を小学校や中学校への出席カウントとして認めてもらう行為が、学校とフリースクールの連携強化により、簡易に行えるようになりました。

しかしながら「教育機会確保法」が出来ても、

2つの大きな課題についてはまだまだ議論が進んでいません。

1つめは、民間のフリースクールにかかる「利用料の負担」です。このブログの冒頭でも示しましたが、平均利用料は3万3千円と言われ、入会金に至っては5万3千円もの費用がかかるとされています。もし中学校3年間フリースクールに通った場合、

入会金5万3千円+3万3千円×12か月×3年分=124万1千円

ということになり、

仮に1年間だけフリースクールに通った場合も

入会金5万3千円+3万3千円×12か月=44万9千円

ということで

3年間の場合 約125万円

1年間の場合 約45万円

と、高校進学や大学進学の際に使うための資金を義務教育段階で使用してしまうことにもなりかねない状態が現在も続いています。

しかしながらフリースクール側も不必要にこのような利用料を設定しているわけではなく、いつ学校復帰するか分からない、いつフリースクールに来ることが出来なくなるか分からない不登校の子どもたちの学びの場を守るために、高額ではありますが、必要最低限の利用料を設定しているといえます。

私自身、フリースクールを運営している立場でもありますので、よく分かることなのですが、フリースクールは不登校の児童生徒を対象にした教育施設であるため、逆に不登校の子どもたちが「学校復帰」したり「転学して学校に通える」ようになったり「進学した」場合には、完全に収入がなくなります。

このため、不登校の子どもたちの学びを保障し、安心できる居場所づくりを行うためには、夜の時間は学習塾を運営したり、別の仕事をしなければ、運営することは不可能に近いです。

またフリースクールのみで経営を維持するためには、「高額な利用料を設定する」or「学校復帰や通信制高校以外の進学を目指さないようなフリースクールづくり」この2つにしなくては、運営が成り立ちません。

しかしながらこの2つの運営形態にした場合、全て保護者負担であるフリースクールの利用料が家庭を圧迫し、フリースクールの利用料が払えない家庭はフリースクールに通うことが出来なくなってしまいます。

また利用料は抑えたとしても、学校復帰や積極的な進学を考えないフリースクールに通学した場合は、その後の進学や就職が難しくなるだけでなく、不登校のコミュニティで長期的に生活を行うことにより、社会復帰すらも難しくなってしまう可能性もあります。

しかしながら、適応指導教室は教育委員会直轄の公的なフリースクールであるため、その運営形態や取り組みが合わない児童・生徒もいますし、いまだ37%の自治体には教育支援センターならびに適応指導教室が無いことを考えると、不登校の子どもの学びの場、居場所の普及、そしてフリースクールの利用料に対する援助というのは、まだまだ日本の教育界が抱える大きな課題です。

2つめは、主に中学校で行なわれる定期テストや内申点が不登校の子どもたちには付かないという点です。例えば東京都の都立入試の場合、内申点が300点、当日の入試点が700点の合計1000点満点で入試が行われます。

都立入試の内申点は中学3年生の成績や出席、活動内容が反映されるため、中学校3年生の4月から完全に学校復帰することが出来れば何の問題もありませんが、そんな不登校生はほぼ存在せず、不登校の生徒は、いくら当日の入試点が良くても、日々の中学校内での活動や定期テストでの結果がないため、都立高校に入学することはほぼ不可能といえます。

このため東京都内で不登校で高校進学を目指している中学生の多くは、私立高校に進学もしくは定時制や通信制、東京都の場合は不登校の生徒を中心に受け入れている都立のチャレンジスクール、エンカレッジスクール以外の選択肢がないのが現状です。

これらの通信制高校やチャレンジスクール、エンカレッジスクールに進学した場合、やはりその先の進学や就職の際に、どうしても学力が足りず、自分の思うような進路につけないことも多く、通信制高校のサポート校や進学塾など、学校以外の部分でもお金がかかります。

また私立高校に進学しようとしても出席日数が無い場合は、入試点が良くても、入学できない可能性もあり、「出席日数」「内申点」は高校入試の際にはとても重要になってくることが分かります。

おわりに

‐不登校を取り巻く課題・実態‐

今回の話はいかがだったでしょうか?

不登校を取り巻く施設の課題、制度の課題、そしてお金の課題、入試の課題…

たくさんの課題が見えてきましたね。

私自身中学生時代不登校だった経験があり、現在はフリースクールのスタッフを行なっているという「支援される側」「支援する側」という双方を経験した立場からしても、まだまだ不登校を取り巻く環境や制度については改革していかなければならないと常々思っている次第です。

今回は主に私が現在勤めている東京都の話を事例にして、フリースクールの話や、受験の話などを行ないましたが、きっと各都道府県、自治体には独自の入試制度や学校制度があるかと思いますので、困ったら是非お近くの市役所や区役所、教育委員会などに不登校関係のことは相談してみてください。

そして「ホームスクール」や「オンライン授業」のことなど、「多様な学び場」「多様な学び」が徐々に周知され、環境が好転している事例もあるため、現在不登校の当事者の方やその保護者の方の中には、まだまだ不安は尽きないかと思いますが、決して悲観せずに、今出来ること、今あることを1つひとつやっていってほしいと、元不登校の私は思っています。

今回もお読みいただきありがとうございました‼

「いいね」や「コメント」などいつでもお待ちしております°˖✧


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